撮り鉄の言う「バルブ撮影」に関する考察

前書き

この記事は撮り鉄特有の謎文化についての考察である。
事前にこれを読んでからの方が楽しく読むことができる。

「バルブ撮影」に関する誤解

既に書いたが撮り鉄は長秒間露光1のことをバルブ撮影と言っている。
カメラのバルブモードを使っていなくても「バルブ撮影」だし、最近では夜に駅で停車した列車を撮影すれば「バルブ撮影」だとする人もいる。

ちなみに、撮り鉄はその「バルブ撮影」をすることを「B」と呼ぶ2
カメラのバルブモードはBulbの頭文字を撮って「B」と表記することがあるのでそこから来ているのだろう。
彼らは人を数える時に1人、2人ではなく1B、2Bと数える文化(?)があるが、それとは違うので注意してもらいたい。

撮り鉄にバルブ撮影は必要なのか

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13秒 F/8 ISO 100でこのくらいいけるので、デジタルカメラでバルブ撮影が必要になるとは思えない。
もっと明るい駅ならなおさら不要である。
AEでいいのに、わざわざ手動で適正露出と露光時間を測って撮影するなど何の利点もなく、本当にバルブ撮影しているならば相当なアホということになる。
明かりのある駅で停まっている列車を停まっている状態で撮る場合はバルブ撮影をする意味は全くない。

撮り鉄はバルブ撮影しているのか

ところで、本当に撮り鉄はバルブ撮影していないのだろうか。
実は日本全国全ての撮り鉄がバルブ撮影をしていないという自信は無い。
だが、少なくとも僕が見てきた撮り鉄達はバルブ撮影をしていない。
シャッターを手で押している人達はバルブ撮影なんかできるわけがないし、露出モードが絞り優先になっていれば100%バルブ撮影ではない。

では撮り鉄たちのカメラの設定を確かめる方法はあるのか。
現代のデジタルカメラは画像データに対して撮影データを埋め込んでいる3
そのデータにはカメラの設定も含まれており、それを見ればバルブ撮影であるかどうかを確かめることができる。

早速Twitterの撮り鉄たちの画像を片っ端から確かめてやりたいところだが、そう簡単にはいかない。
実は大抵のSNSやブログサイトは写真をアップロードする際にExifデータを除去している。
Twitterにアップロードされた時点で撮影データは完全に失われており4、確かめる方法はない。

Twitterを見ていたところ、過去にバルブ撮影の定義論争5が発生したようで、撮り鉄たちがバルブ撮影の定義を語ってくれている。
結論を言うと全ての撮り鉄がバルブ撮影の意味を誤解していたわけではなかったが、多くの撮り鉄が誤解していた。

「バルブ撮影 1秒」で検索するとまだまだ沢山出てくる。

誤解はどこから来たのか

この「長秒間露光=バルブ撮影」の誤解はどこから来たのか。
多くの人が露光時間が1秒以上であればバルブ撮影になるという誤解をしているので、「バルブ撮影 1秒」でググったところ同様の誤解をしたウェブページが出てきた。

長時間露光という撮影方法をご存じだろうか? 通称バルブ撮影、もしくはスローシャッター。1秒以上シャッターを開いて撮影する手法である。

息を呑むほど幻想的! 長時間露光で撮影された写真がとにかく美しい | ロケットニュース24
https://rocketnews24.com/2011/10/21/143775/

また、バルブ撮影の意味の解説で露光時間に触れていたウェブページがあった。

バルブ撮影とは1秒よりも長いシャッタースピードの時、
シャッターボタンを押している間中シャッターが開く機能のことです。
シャッタースピードの設定は「B」や「BULB」などで表示されます。

バルブ撮影とは バルブ撮影の方法 デジタルカメラ
http://www.dejikame.net/z0588.html

このようなウェブサイトは誤解が広がる原因だっただろうか。
インターネットを見る限り、このようなウェブサイトができる前から撮り鉄たちは「バルブ撮影」という単語を使っているように思える。
これらのウェブページは誤解が広がる原因のうちの1つかもしれないが、最大の原因は違うところにあるだろう。
その最大の原因は昔から今にかけて「バルブ撮影」という言葉の意味が正しく伝わらなかったからだ。

昔は今よりもバルブ撮影の頻度は多かった。
今のように全てのカメラが30秒も自動で露光できたわけではないし、フィルムの感度は撮影途中で変えられない。
昔の撮り鉄にとって夜間に停まっている列車を長秒間露出で撮るといえばバルブ撮影であり、いつしか夜間に停まっている列車を長秒間露光で撮ることを「バルブ撮影」と言うようになったのだろう。

時代が進み、バルブ撮影でなくとも夜間で撮影できるようになった。
わざわざ適正露出と露光時間を測らずとも自動で撮影できるようになったのだ。
もはやバルブ撮影の出番はなく、新しく参入した撮り鉄たちはバルブ撮影をほとんどしなくなった。
それでも「バルブ撮影」という言葉は残り続けた。
彼らは先人達に倣い夜間に停まっている列車を長秒間露出で撮ることを「バルブ撮影」と言った。
しかし、バルブ撮影していないのに「バルブ撮影」とは意味が分からない。
意味が分からないからこそ「露光時間が1秒を超えればバルブ撮影である」という誤解が広がってしまった。
この時点で元々のバルブ撮影の意味と撮り鉄の「バルブ撮影」の意味が大きく異なるものになった。

さらに今日では長秒間露光すら不要になった。
フィルムの時代では想像もつかないような高感度を使え、手ぶれも手ぶれ補正で軽減することが当たり前になった。
もはや三脚を使うことが無くなった人達が出るようになったのだ。
彼らにとってのバルブ撮影は単に夜間に停まっている列車を撮影することであり、手持ちで「バルブ撮影」をする(らしい)。
三脚は時代遅れであり、三脚を使う従来の撮り鉄たちと論争を繰り広げるのだ。

つまり、「バルブ撮影」の意味は時代とともに変わってしまったのである。
技術の進歩で撮影時の制約が緩くなり、伝言ゲームで徐々に意味が欠落していった。

シャッターボタンを押している間露光するバルブモードを使って撮影すること

バルブモードを使って夜間に停まっている列車を長秒間露光で撮影すること

夜間に停まっている列車を長秒間露光で撮影すること

夜間に停まっている列車を      撮影すること

これからは夜間でも動いている列車を容易に撮影できる時代が来ることだろう。
未来では夜間に列車を撮影することが「バルブ撮影」であり、停まっている列車しか撮れない撮り鉄達を「下手くそ」と言ってバカするようになるだろう。
彼らは停車駅に群がり、罵声を叫び、駅員と喧嘩をする撮り鉄達と論争を繰り広げることになる。
僕はそんな未来が待ち遠しい。

あとがき

バルブ撮影の誤解と毎月発生する三脚論争という撮り鉄特有の謎文化について無駄に掘り下げて書いた。
いろんな撮り鉄に読んでもらえたらしいが、文章が長すぎるせいかいまいち理解してもらえなかったらしい。
とりあえず「シャッタースピードが1秒以上ならバルブ撮影」は100%間違いであるのは確かなので間違った意味で言葉を使うのはやめて欲しい。
バルブ撮影の意味が分からなかったのならググれ

  1. スローシャッターとも言う。
  2. 「バルブ撮影」することをBする、「バルブ撮影」で撮った写真をBカットと言う。
  3. Exifデータと言う。
  4. ついでに画質も失われている。
  5. 撮り鉄は論争が大好きで、毎月「三脚を使って撮影してもいいか」という論争を繰り広げている。https://twitter.com/sinturumisingou/status/893293177716711424